コンテンツにスキップ

アクセシビリティの基礎

第24講 / 全32講読了目安 約50分
  • ウェブアクセシビリティが誰のための何の品質か
  • 障害、加齢、一時的・状況的な制約とWeb利用の関係
  • WCAG 2.2の四原則と適合レベル
  • HTML、デザイン、コンテンツ、JavaScriptが担う基礎的な対応
  • PMが目標・対象・役割・テストを要件化する方法

ウェブアクセシビリティは、利用者の身体・認知・利用環境等にかかわらず、Webの情報や機能へアクセスし、理解し、操作できるようにすることです。

flowchart LR
    C[Webコンテンツ・機能] --> V[見る]
    C --> H[聞く]
    C --> K[キーボード等で操作]
    C --> U[理解する]
    C --> A[支援技術から利用]

「障害者向けの追加機能」だけではありません。

次のような状況にも関わります。

  • 画面を見にくい
  • 音を聞けない
  • マウスを使えない
  • 小さな操作が難しい
  • 複雑な文章・手順を理解しにくい
  • 強い動きや点滅で体調に影響する
  • 一時的なけが
  • 屋外のまぶしい環境
  • 音を出せない場所
  • 片手でスマートフォンを使う
  • 通信が遅い
  • 加齢による変化

アクセシビリティ改善は、多くの利用者の使いやすさ・堅牢性にもつながります。

Webサイトは、画面を見てマウス・タッチで操作する人だけが使うものではありません。

  • スクリーンリーダー
  • 画面拡大
  • ハイコントラスト設定
  • 音声入力
  • スイッチデバイス
  • キーボード
  • 点字ディスプレイ
  • 字幕
  • 読み上げ・読みやすさ支援
  • 動きを減らすOS設定
  • 画像を見ずに代替テキストを聞く
  • 見出し一覧から目的箇所へ移動する
  • Tabキーで操作対象を移る
  • 200%・400%へ拡大する
  • 色ではなくテキスト・形で状態を判断する
  • 動画を字幕で理解する

見た目の完成画像だけでは、これらの利用方法を確認できません。

アクセシビリティは複数職種の成果

Section titled “アクセシビリティは複数職種の成果”
flowchart TD
    P[企画・PM] --> A[目標・対象・調達]
    IA[情報設計・コンテンツ] --> B[構造・言葉・代替]
    D[デザイン] --> C[色・文字・操作・状態]
    E[実装] --> F[HTML・キーボード・動的UI]
    Q[テスト] --> G[自動・手動・支援技術]
    O[運用] --> H[更新・教育・継続改善]

実装者だけに「アクセシビリティ対応してください」と依頼しても、次は解決できません。

  • 分かりにくい情報構造
  • 色だけで表したデザイン
  • 文字の入った画像
  • 説明のないリンク文言
  • 字幕のない動画
  • 複雑すぎるフォーム
  • CMS編集者が入力する代替テキスト

要件・原稿・デザインから分担します。

WCAG(Web Content Accessibility Guidelines)は、Webコンテンツをアクセシブルにするための国際的な技術標準です。

W3CのWAIによって策定されています。

WCAG 2.2は、四つの原則の下にガイドラインと、検証可能な達成基準を持ちます。

flowchart TD
    W[WCAG 2.2] --> P[知覚可能]
    W --> O[操作可能]
    W --> U[理解可能]
    W --> R[堅牢]
    P --> L[A・AA・AAAの達成基準]
    O --> L
    U --> L
    R --> L

情報・UIを、利用者が知覚できる形で提供します。

  • 画像の代替
  • 字幕
  • 情報構造
  • 色・コントラスト
  • 拡大・リフロー

操作・移動を行えるようにします。

  • キーボード操作
  • 十分な時間
  • 点滅・動き
  • ナビゲーション
  • フォーカス
  • 操作対象の大きさ

内容と操作を理解・予測しやすくします。

  • 言語
  • 一貫した操作
  • 入力支援
  • エラーの説明
  • 認証の負担

ブラウザ・支援技術等が内容と状態を解釈できるようにします。

  • 適切なHTML
  • 名前・役割・状態
  • 動的更新の通知

WCAGの達成基準にはA、AA、AAAのレベルがあります。

一般に、対象規格・調達要件・組織方針に基づき、目標レベルを設定します。

「AA対応」という言葉だけでは不十分です。

  • 対象ページ
  • 対象機能
  • 適用するWCAGの版
  • 適合レベル
  • 対象外・第三者コンテンツ
  • 試験方法
  • 公開時期
  • 適合表明・試験結果
  • 公開後の維持

を明確にします。

日本の案件ではJIS X 8341-3等を参照する場合があります。法令・調達・社内基準上の要求は、案件ごとに専門部門と確認します。

WCAGは初心者向けの作り方説明書ではない

Section titled “WCAGは初心者向けの作り方説明書ではない”

WCAGは技術標準であり、実装・デザインの入門資料とは役割が異なります。

  • WCAG:満たすべき達成基準
  • Understanding:達成基準の意図・背景
  • Techniques:満たす方法の例
  • Quick Reference:基準・方法を検索
  • デジタル庁ガイド:非専門家向けの考え方・実務
  • APG:複雑なUIパターンのARIA・キーボード例

標準だけを読み、チェック項目を機械的に適用すると、不要・不適切な対応になることがあります。

目的と利用者の使い方を理解して使います。

適切なHTML要素を使うと、ブラウザ・支援技術が情報の役割を理解できます。

  • ページタイトル
  • 見出し
  • ナビゲーション
  • メインコンテンツ
  • リスト
  • 引用
  • フォーム
  • ボタン
  • リンク

見た目をCSSで同じにしても、単なるdivとボタン要素では、キーボード・読み上げ・役割が異なります。

ARIAはHTMLへ意味・状態を補う技術ですが、標準HTMLで実現できるものを不要に置き換えないことが基本です。

見出しは、文字を大きくする装飾ではなく、内容の階層を表します。

flowchart TD
    H1[ページの主題 h1] --> H2A[主要セクション h2]
    H1 --> H2B[主要セクション h2]
    H2A --> H3A[下位セクション h3]

スクリーンリーダー利用者は、見出し一覧でページを移動できます。

ランドマークは、ヘッダー、ナビゲーション、メイン、フッター等の領域を示します。

情報設計とHTML構造を合わせます。

画像が伝える目的・情報を、見られない利用者へテキストで提供します。

内容・目的を簡潔に説明します。

情報を持たない場合、読み上げ対象から外します。

画像の見た目ではなく、操作の目的を伝えます。

短い代替だけで足りない場合、本文・表・詳細説明を用意します。

「画像です」「写真」「image.jpg」のような代替は役に立ちません。

一方、周囲の本文と同じ情報を冗長に繰り返す必要もありません。

CMS編集者が判断できる入力ガイドを用意します。

色覚や視力、画面・照明条件によって、色の見え方は異なります。

  • 文字と背景
  • ボタン・入力枠
  • フォーカス
  • グラフ
  • エラー
  • 選択状態

で十分な判別を確保します。

色だけで意味を伝えず、テキスト、アイコン、形、パターン等を併用します。

例:

  • 赤だけで必須・エラーを示さない
  • グラフ系列を色だけで区別しない
  • 選択中タブを色だけで表さない

ブランドカラーを変えるだけでなく、文字サイズ、太さ、背景、部品の使い方で調整できます。

マウスを使えない・使わない利用者は、キーボード等で操作します。

  • すべての操作へ到達できる
  • 論理的な順番で移動する
  • 現在位置が見える
  • 操作不能な場所へ閉じ込められない
  • メニュー・モーダルを開閉できる
  • スキップリンク等で繰り返し領域を飛ばせる
  • 独自ショートカットが入力を妨げない

フォーカス枠をデザイン上の理由で消さないようにします。

必要なら、ブランドに合う見やすいフォーカス表示へ変更します。

別ページ・場所へ移動します。

送信、開閉、実行等の動作を起こします。

見た目ではなく役割で使い分けます。

「こちら」「詳しく見る」だけが多数並ぶと、リンク一覧で目的を判別しにくくなります。

文脈を含むリンク名や、アクセシブルな名前を設計します。

フォームは、ラベル、説明、入力、エラー、確認、完了を一連で設計します。

flowchart LR
    L[項目名・説明] --> I[入力]
    I --> V{検証}
    V -->|問題あり| E[場所と修正方法を示す]
    V -->|問題なし| C[確認・送信]
    C --> R[完了・次の行動]
  • 入力欄にラベルが関連づく
  • 必須・任意が分かる
  • 形式・文字数を入力前に説明
  • エラー箇所と理由を伝える
  • 色だけでエラーを示さない
  • 入力内容を不必要に消さない
  • 自動入力を妨げない
  • キーボードで操作できる
  • 完了・失敗を通知する

プレースホルダーだけをラベル代わりにすると、入力中に項目名が見えなくなります。

拡大・リフロー・レスポンシブ

Section titled “拡大・リフロー・レスポンシブ”

文字やページを拡大したときに、内容・操作が欠落しないようにします。

  • 横スクロールが過剰に発生しない
  • 文字が重ならない
  • ボタン・入力欄が画面外へ消えない
  • 固定ヘッダーが内容を隠さない
  • モーダルをスクロールできる
  • 表の閲覧方法を用意する
  • 画面方向を不必要に固定しない

レスポンシブデザインを実装しただけで、拡大・リフロー要件を満たすとは限りません。

長文、多言語、ブラウザズームで確認します。

  • 字幕
  • 音声解説
  • 文字起こし
  • 操作可能なプレイヤー
  • 自動再生の制御
  • 音だけで重要情報を伝えない

必要な対応はコンテンツの種類・要件で異なります。

  • 自動で動くカルーセル
  • 背景動画
  • 点滅
  • スクロールアニメーション
  • 視差効果

は、停止・一時停止や、動きを減らす設定への配慮を検討します。

強い点滅は健康上のリスクになる場合があります。

アクセシビリティはコードだけではありません。

  • 短く具体的な見出し
  • 難語・略語の説明
  • 一貫した名称
  • 手順の分割
  • 重要情報の先出し
  • エラーの修正方法
  • 日付・金額・期限の明示
  • アイコンだけに頼らない
  • PDF以外の情報提供
  • 多言語の言語指定

等が、理解可能性に関わります。

業界用語を使う場合、対象利用者が理解できるか確認します。

アクセシビリティ目標を決める

Section titled “アクセシビリティ目標を決める”

案件開始時に次を決めます。

  • 適用規格・版
  • 目標レベル
  • 対象ページ・機能
  • 対象ブラウザ・支援技術
  • 第三者コンテンツ
  • 既存コンテンツ
  • PDF・動画
  • 試験方法
  • 公開する情報
  • 未達事項の扱い
  • 公開後の改善

「できる限り対応」では、見積・テスト・合否が曖昧です。

対象外がある場合も、理由、代替手段、改善計画を記録します。

  • ナビゲーション
  • 見出し
  • 画像・図表
  • PDF
  • フォーム
  • 動画
  • スライダー
  • CMS更新
  • 多言語

を職種横断で確認します。

  • 検索条件
  • 地図だけに頼らない一覧
  • 現在地許可
  • フィルター状態
  • 0件・エラー
  • キーボード
  • 動的更新の通知
  • 距離・営業時間の表現

が重要です。

  • ログイン
  • セッション期限
  • モーダル
  • 複雑なフォーム
  • 表・グリッド
  • 動的通知
  • SPAページ遷移
  • タイムアウト

等、JavaScriptによる状態管理とフォーカスが重要になります。

  • アクセシビリティを対象利用者と事業品質として説明できる
  • 適用規格・版・目標レベル・対象範囲を決めている
  • 発注・見積・受入条件にアクセシビリティを含めている
  • 情報設計、原稿、デザイン、実装、運用の担当を分けている
  • 見出し・ナビゲーション・HTML構造を確認している
  • 画像・図表・アイコンの代替情報を設計している
  • 色だけで状態・意味を伝えていない
  • コントラストとフォーカス表示を確認している
  • すべての主要操作をキーボードで行える
  • フォームのラベル・説明・エラー・完了を設計している
  • 拡大・リフロー・長文・多言語を確認している
  • 動画の字幕等と自動再生・動きの制御を決めている
  • CMS編集者向けの入力ルールを用意している
  • 自動検査だけでなく手動・支援技術確認を計画している
  • 公開後のコンテンツ更新・改修で維持する体制がある

「アクセシビリティは視覚障害者向け」

Section titled “「アクセシビリティは視覚障害者向け」”

聴覚、身体、認知、発話、加齢、一時的・状況的な制約等、幅広い利用に関わります。

「WCAGのチェックリストを満たせば使いやすい」

Section titled “「WCAGのチェックリストを満たせば使いやすい」”

WCAGは重要な基準ですが、実際の内容・操作・業務が分かりやすいか、利用者が目的を達成できるかも確認します。

「ARIAを追加すればアクセシブルになる」

Section titled “「ARIAを追加すればアクセシブルになる」”

誤ったARIAは支援技術へ誤情報を伝えます。まず適切な標準HTMLを使い、必要な場合に役割・状態を補います。

原稿、色、部品、動画、フォーム、CMS運用等は上流で決まるため、最後では手戻りが大きくなります。

「自動ツールでエラーがゼロなら合格」

Section titled “「自動ツールでエラーがゼロなら合格」”

代替テキストの適切さ、キーボードの自然さ、読み上げ順、内容理解等、自動判定できない問題があります。

Q1. ウェブアクセシビリティを一言で説明してください。

Section titled “Q1. ウェブアクセシビリティを一言で説明してください。”
回答と解説 利用者の障害・加齢・利用環境等にかかわらず、Webの情報と機能を知覚・操作・理解し、支援技術を含む環境から利用できるようにすることです。

Q2. WCAGの四原則を挙げてください。

Section titled “Q2. WCAGの四原則を挙げてください。”
回答と解説 知覚可能、操作可能、理解可能、堅牢です。

Q3. 色だけでエラーを示してはいけない理由は何ですか。

Section titled “Q3. 色だけでエラーを示してはいけない理由は何ですか。”
回答と解説 色を判別しにくい利用者や環境では意味が伝わらないためです。テキスト、アイコン、位置・形等を併用します。

Q4. 画像の代替テキストは、画像の見た目をすべて説明すればよいでしょうか。

Section titled “Q4. 画像の代替テキストは、画像の見た目をすべて説明すればよいでしょうか。”
回答と解説 画像がその文脈で伝える目的・情報を表します。装飾なら読み上げから外し、グラフ等は本文・表で詳細を補う場合があります。

Q5. 自動アクセシビリティ検査だけでは不十分な理由は何ですか。

Section titled “Q5. 自動アクセシビリティ検査だけでは不十分な理由は何ですか。”
回答と解説 代替テキストの意味、見出しの妥当性、キーボード操作の自然さ、読み上げ、内容理解等は人間による手動・支援技術確認が必要だからです。