サーバーとクラウド
このページで学ぶこと
Section titled “このページで学ぶこと”- Web制作における「サーバー」の意味
- オンプレミス、レンタルサーバー、仮想サーバー、クラウドの違い
- IaaS・PaaS・SaaSを、製品分類ではなく責任分界として捉える方法
- サーバーの選定が、費用・公開手順・保守・障害対応へ与える影響
サーバーとは、Webサイトのファイルを配信したり、プログラムを実行したり、データを保存したりする側のコンピューターやサービスです。
現在のWeb制作では、物理的なサーバーを自社で所有するケースだけでなく、クラウド事業者が提供する機能を組み合わせるケースが一般的です。
flowchart LR
U[利用者のブラウザ] --> I[インターネット]
I --> W[Webサイトの配信基盤]
W --> F[HTML・CSS・JavaScript・画像]
W --> A[アプリケーション処理]
A --> D[データベース]
A --> X[外部API]
重要なのは、「サーバーという箱があるか」よりも、どの処理を、どのサービスが担当し、誰が管理するかです。
サーバーという言葉は複数の意味で使われる
Section titled “サーバーという言葉は複数の意味で使われる”現場では、次のものがすべて「サーバー」と呼ばれることがあります。
- 物理的なコンピューター
- 仮想化されたコンピューター
- Webページを返すソフトウェア
- Webサイトを置くホスティングサービス
- クラウド上の実行環境
- CMSやデータベースを含むシステム全体
そのため、「サーバーは何を使いますか」という質問だけでは不十分です。
PMは、少なくとも次を分けて確認します。
- Webサイトのファイルはどこに保存されるか
- アクセスを受けて処理する仕組みはあるか
- データベースはあるか
- CMSはどこで動くか
- バックアップ、監視、アップデートを誰が担当するか
オンプレミスとクラウド
Section titled “オンプレミスとクラウド”オンプレミスは、組織が自社設備や専用環境にサーバーを用意し、広い範囲を管理する形です。
クラウドは、クラウド事業者が用意したコンピューティング、ストレージ、ネットワークなどを、必要に応じて利用する形です。
| 観点 | オンプレミス | クラウド |
|---|---|---|
| 初期準備 | 機器調達や設置が必要 | 比較的短期間で開始できる |
| 管理範囲 | 利用者側が広く管理 | 一部を事業者へ任せる |
| 拡張 | 機器追加が必要 | 設定や契約変更で拡張しやすい |
| 費用 | 初期費用が大きくなりやすい | 利用量・機能に応じた費用が中心 |
| 自由度 | 独自要件に対応しやすい | サービスの仕様・制約を受ける |
| 障害対応 | 自社・委託先で広く対応 | 事業者と利用者の両方に責任がある |
クラウドを使うと、すべての保守が不要になるわけではありません。利用するサービスによって、利用者側に残る責任が変わります。
レンタルサーバー、仮想サーバー、マネージドサービス
Section titled “レンタルサーバー、仮想サーバー、マネージドサービス”Web制作でよく登場する選択肢を、PM向けに単純化すると次のようになります。
共用レンタルサーバー
Section titled “共用レンタルサーバー”一つの基盤を複数の利用者で共有し、Webサイトやメールに必要な機能があらかじめ用意されています。
小規模サイトでは扱いやすい一方、使用できるソフトウェア、処理能力、アクセス制御などに制限があります。
VPS・仮想マシン
Section titled “VPS・仮想マシン”一台の物理サーバーを仮想的に分割した環境や、クラウド上の仮想コンピューターです。
自由度は高い一方、OS、Webサーバー、ミドルウェア、セキュリティ更新、監視などを誰が管理するか決める必要があります。
マネージドサービス
Section titled “マネージドサービス”データベース、CMS、ホスティング、検索、認証などの特定機能をサービスとして利用します。
基盤管理を減らせますが、サービス仕様、料金、データ移行、障害時の影響、解約時の扱いを確認する必要があります。
IaaS・PaaS・SaaSは「誰が管理するか」の違い
Section titled “IaaS・PaaS・SaaSは「誰が管理するか」の違い”IaaS、PaaS、SaaSという分類は、暗記するよりも管理範囲で捉えると実務へつながります。
flowchart TB
subgraph 利用者が主に管理
C[コンテンツ・データ]
APP[アプリケーション]
MW[ミドルウェア]
OS[OS]
end
subgraph 事業者が主に管理
V[仮想化基盤]
H[物理サーバー]
N[ネットワーク・施設]
end
| 分類 | 利用者側に残りやすい管理 | Web制作でのイメージ |
|---|---|---|
| IaaS | OS、ミドルウェア、アプリ、データ | 仮想マシン上にWeb環境を構築 |
| PaaS | アプリ、設定、データ | アプリを配置すると実行環境が提供される |
| SaaS | 利用設定、ユーザー、入力データ | CMS、フォーム、検索などをサービス利用 |
実際のサービスは、この三分類にきれいに収まらないこともあります。PMにとって重要なのは分類名ではなく、管理・更新・監視・復旧の担当範囲です。
クラウドの費用は「サーバー代」だけではない
Section titled “クラウドの費用は「サーバー代」だけではない”クラウドでは、次の項目が別々に課金されることがあります。
- コンピューターの稼働時間
- 保存容量
- データ転送量
- リクエスト数
- ビルド時間
- ログの保存量
- バックアップ
- WAFや監視などの追加機能
- サポートプラン
アクセスが少なければ安価でも、画像・動画配信、API呼び出し、大量ログなどによって費用が増える場合があります。
見積時には、初期構築費だけでなく、通常時、繁忙時、障害調査時の月額費用を確認します。
実案件ではどう考えるか
Section titled “実案件ではどう考えるか”クライアントがサーバーを用意する場合
Section titled “クライアントがサーバーを用意する場合”「サーバーを用意してください」だけでは、必要条件が伝わりません。最低限、次を整理します。
- 静的ファイルを配信できればよいか
- サーバー側プログラムを実行するか
- 使用する言語・ランタイム・バージョン
- データベースが必要か
- 外部APIへ通信するか
- HTTPS、独自ドメイン、アクセス制限が必要か
- ログ、バックアップ、監視を誰が用意するか
- 開発・検証・本番環境を分けるか
制作会社がクラウド構成を提案する場合
Section titled “制作会社がクラウド構成を提案する場合”構成の技術的な正しさだけではなく、クライアントが公開後に運用できるかを確認します。
たとえば、複数のクラウドサービスを組み合わせると柔軟になりますが、契約、権限、請求、監視、障害連絡先も増えます。
「将来の拡張性」を理由に過剰設計しない
Section titled “「将来の拡張性」を理由に過剰設計しない”将来利用するか分からない大量アクセス対応や複雑な動的機能のために、最初から高コスト・高運用負荷な構成を採用する必要はありません。
重要なのは、現在の要件へ適合し、必要になったときに拡張できる余地を持つことです。
PMチェックリスト
Section titled “PMチェックリスト”- 配信するものが静的ファイルか、動的処理を含むか整理している
- 本番・検証・開発環境の有無と違いを把握している
- サーバー、CMS、データベース、外部APIの配置を把握している
- OS・ミドルウェア・ライブラリの更新担当を決めている
- 監視、ログ、バックアップ、復元の担当を決めている
- クラウドの契約者、請求先、管理権限を決めている
- 通常時とアクセス増加時の費用を確認している
- サービス終了・移管時にデータや設定を引き渡せる
- 技術選定の理由を、非技術者へ説明できる
よくある誤解・失敗
Section titled “よくある誤解・失敗”「クラウドに置けば保守は不要」
Section titled “「クラウドに置けば保守は不要」”クラウド事業者は物理設備や共通基盤を管理しますが、利用者が設定したアカウント、権限、アプリ、データ、CMS、ライブラリなどは自動的に守られるわけではありません。
「高性能なサーバーならサイトも必ず速い」
Section titled “「高性能なサーバーならサイトも必ず速い」”表示速度には、画像、JavaScript、外部タグ、CDN、キャッシュ、データベース、APIなど多くの要素が影響します。
「契約はクライアントなので制作会社に責任はない」
Section titled “「契約はクライアントなので制作会社に責任はない」”契約者がクライアントでも、設定作業、監視、障害調査、脆弱性対応を誰が行うかは別途決める必要があります。
「従量課金なら必ず安い」
Section titled “「従量課金なら必ず安い」”アクセス量、データ転送、ログ、ビルド回数、外部サービス利用量によっては費用が増えます。上限通知や予算管理も設計対象です。
理解度チェック
Section titled “理解度チェック”Q1. クラウドを利用すると、利用者側の管理責任はすべてなくなるでしょうか。
Section titled “Q1. クラウドを利用すると、利用者側の管理責任はすべてなくなるでしょうか。”回答と解説
なくなりません。物理設備や一部の基盤管理をクラウド事業者へ任せられますが、アカウント、権限、設定、アプリケーション、データなど、利用サービスに応じた管理責任が残ります。Q2. 仮想マシンとSaaS型CMSでは、どちらが自由度と管理負荷が高くなりやすいでしょうか。
Section titled “Q2. 仮想マシンとSaaS型CMSでは、どちらが自由度と管理負荷が高くなりやすいでしょうか。”回答と解説
一般には仮想マシンの方が自由度も管理負荷も高くなります。SaaS型CMSは基盤管理を事業者へ任せやすい一方、製品の仕様や料金体系に依存します。Q3. クライアントから「サーバーは用意します」と言われたら、何を確認しますか。
Section titled “Q3. クライアントから「サーバーは用意します」と言われたら、何を確認しますか。”回答と解説
静的配信だけでよいか、必要なランタイムやデータベース、HTTPS、アクセス制限、外部通信、環境分離、ログ・監視・バックアップ、更新担当などを確認します。Q4. 「将来アクセスが増えるかもしれない」という理由だけで、最初から複雑な構成にすべきでしょうか。
Section titled “Q4. 「将来アクセスが増えるかもしれない」という理由だけで、最初から複雑な構成にすべきでしょうか。”回答と解説
必ずしもそうではありません。現在の要件、予算、運用体制へ適合し、必要時に拡張できる構成かを判断します。複雑化による費用・障害点・属人化も考慮します。- ニフティ「AWS基礎/2023新人研修」
https://speakerdeck.com/niftycorp/emtg2023-aws-basic
クラウド、オンプレミス、サービス分類、設計観点を理解するための参考資料。 - AWS「クラウドコンピューティングの種類」
https://aws.amazon.com/types-of-cloud-computing/
IaaS・PaaS・SaaSの管理範囲を確認するための公式解説。 - AWS「責任共有モデル」
https://aws.amazon.com/jp/compliance/shared-responsibility-model/
クラウド事業者と利用者の責任を分けて考えるための公式資料。